17歳から37年間治療していない。タバコを吸うのでインプラントではなく入れ歯にした(50代男性)
歯医者が苦手で17歳の時から37年間一度も治療していない
こちらの患者さんは17歳の時から37年間治療をしていない。15年前に思い切って行った別の歯科医からは「ひどい」と言われ、治療はしなかったとのことです。
治療前の状態と患者さんの希望
- 17歳の時から37年間、一度も歯科治療をしていない。
- 次第に歯を失ってしまったが、仕事の忙しさもあって、治療を先延ばしにしてきた。
- しっかりと、咬むことができない。
- 見た目も悪く、大きく口を開けられない。
- 大きく口を開けて、食事や会話をしたい。
- 口元を見られても大丈夫なような口元にしたい。
- 15年前に一度、思い切って歯科医院に行ったことがあったが、歯科医師からいきなり、「ひどい」と言われ、治療費用の話になったので、そこでの治療はしなかった。
- ずっと歯が無い状態だったので、しっかり噛めるという状態がどんな状態なのかわからないものの、しっかりと噛めるようになりたい。
治療後
来院時の診断
上下顎とも虫歯や歯根破折などで、治療した冠が外れたり、歯が抜けたままになったりしていて、上下の歯がかみ合うところが、ほとんどありませんでした。
上顎前歯も、ほんのわずかの歯根が歯肉の中に残っているだけの状態で、見た目が悪いため、患者さんは歯が見えないように、口を開けないように話をされていました。精密検査をして、虫歯治療や歯周病治療を行って残せる歯は残し、上下の義歯治療を行うことにしました。
インプラントではなく、義歯を選んだ理由
義歯以外の方法として、インプラント治療も考えられますが、失っている歯の数が多いことと、残せる歯の中に神経のない失活歯が複数あることから、今の欠損部だけをインプラントで治療をしても、治療後に新たなインプラント治療が必要になる可能性があります。
また、患者さんは1日に約30本のタバコを吸う習慣があり、喫煙者のインプラントの予後は良くないため、インプラントの脱落再治療のリスクも高くなることも考慮し、患者さんご自身もインプラントは希望されませんでした。
日本口腔インプラント学会 口腔インプラント治療指針2020より抜粋
喫煙は、インプラント手術後の治癒と生着及び予後に対するリスクファクターである。喫煙者は粘膜に慢性炎症が存在して、(インプラント埋入時の)粘膜創の治癒不全が起こりやすい。そのため、非喫煙者と比較してインプラント治療の成功率が低いことが報告されている。
また、骨移植においても非喫煙者と比較して成績は不良である。喫煙は歯周病を悪化させる。喫煙を継続すると、歯周病が悪化するだけでなく、インプラント周囲炎やインプラント周囲骨の吸収を惹起する可能性が高い。
義歯はインプラントに比べて、違和感があり咀嚼効率は良くないものの、残っている歯の状態が悪くなって抜歯になった際にも、大掛かりな治療のやり直しの必要がなく、義歯の修理で対応ができるため、長期的視野に立つと、患者さんの安心感も大きな治療です。
インプラントには、義歯では得られない長所もありますが、義歯にもインプラントでは得られない長所があります。それぞれの患者さんの喫煙習慣も含めた生活スタイルや、残っている歯の今後のリスク、患者さんの歯科治療に期待するものを一緒に考えながら、義歯治療を選びました。
治療の進め方
小さな歯根だけしか残っていない上顎10本と下顎1本、根尖病巣が大きく保存困難な左下小臼歯1本は抜歯をしました。
左上の奥の1本と、右下の1本は、歯根だけが残っていて状態は万全ではないものの、抜歯をするまで悪い状態ではなく、しばらくの間は義歯の維持に利用できると思われたため、歯根だけを磁石装置に利用しました。
3本の歯根は、義歯の下支えとして残しました。17歳の時の37年前の治療の冠も、状態が悪くないものは、作り直しをせずにそのまま利用しました。かなり前に治療をした歯でも、虫歯や歯周病、根尖病巣など、問題がないものはそのまま利用します。やらなくても良い治療はできるだけ避けるべきだと私たちは考えています。
義歯は、歯や顎堤にフィットしていることに加えて、食事や会話の時の口や頬の動きを妨げない形態にすること、咬合時に安定していること、咬合時にゆがまないこと、歯の清掃性を保てること、を留意して治療を進めることが肝要です。
時間をかけて口や頬の動きを再現しながらの型取り、噛み合わせの高さを決める咬合採得、高さの確認の写真撮影、歯並び確認義歯による口元の見た目の修正と写真撮影など、各ステップを確認しながら進めていきました。
治療と並行して、残す歯の歯周病治療、根管治療と磁石装置の準備なども行います。義歯完成後に、義歯に磁石を埋入しますが、その後、患者さんに使用していただきながら、微調整をしていきます。時間をかけて型取りをし、細かい技工の作業をしても、患者さんの咬合力や噛み方の癖、嘔吐反射の強さ、会話時の口の動き、発音の仕方など、一人として、同じことはありません。義歯装着後の一人ひとりに合わせた微調整が重要です。
そして、せっかく、治療を行ってよくなった状態は、長く維持していただくために、残した歯は、できるだけ長く持たせるようにしなければなりません。義歯の丁寧な扱い方の指導も重要です。歯周病治療とともに、患者さん自身が正しい歯磨きができるようにマンツーマンで歯の磨き方の指導も行い、治療後には定期健診クリーニングに通っていただくことも丁寧に説明をしました。
治療後は、3か月に1回の定期健診で、義歯の状態、歯周病の状態、義歯の清掃状態を確認しながら、今も、治療後と変わりなく、快適に義歯を使用されています。
この患者さんは、特別な事情で少ない通院回数で治療をせざるを得ない状況でした。当院は、どの患者さんも基本の治療時間は1時間、治療内容によっては2時間から半日の予約で治療を進めていくこともあります。
治療だけでなく、クリーニングであっても、予約を取ると、その時間は他の患者さんの予約を入れずに、その方だけのために医院全体が準備をするので、キャンセルがあるとその時間はどなたの治療もできなくなり、困る場合があるのですが、この患者さんは12回にまとめた治療中、一度の遅刻もキャンセルも予約変更もなく、最後まで治療がスムーズに進みました。患者さんが、真剣に治療に取り組んでくださったことが、私たちにもよく伝わってきました。
治療後の状態は?
- 誰にも相談できずに悩んでいて、仕事でも発言できないでいたが、治療をしてから、なんの痛みも問題もなく、義歯を使えている。
- 歯医者などが苦手だったことがうその様です。
患者さんのアンケートからの抜粋
長年、自分の歯の事で誰にも相談できずに悩んでいました。生活や仕事なんかでも積極的な意見も出せずにいました。そんな時、たまたまネットで検索していたところ萩原さんを見つけました。
入れ歯専門、入れ歯患者さんのため、カウンセリング、個室での集中治療などその一つ一つが不安を消してゆき、体験談が後押しとなり治療の決め手となり今に至ります。
治療を続けていくうちに院長先生の治療や対応、スタッフの対応など誠意を感じることが出来、自分の判断は間違ってなかった。ここに通院して良かったと思うようになり、歯医者などが苦手だった事が嘘のようです。皆さんには心から感謝しています。ありがとうございます。そしてこれからも宜しくお願いします。